かつての同僚がミュンヘンとザルツブルクの中間の小さな街、トラウンシュタイン Traunsteinという街の出身で、彼の生まれ育った家で、現在はその街で一人暮らしをしているお父さんが不在であったため、その家に招待をしてくれることになった。普段は腰の重いわが妻も二つ返事で承諾したこともあり、久しぶりに家族揃っての小旅行となった。
かつては2歳にも満たない長男にイタリアの街を見せたいなどと世迷い言を抜かし、シエナへ出かけトラウマとなった我が家にとって、次男が生まれてからは久しぶりの、電車で約一時間程度の家族大移動だった。
次男は車窓の景色を眺めるのが楽しいらしく、牛、湖!などと異なるシーンが窓の外を過ぎ去ってゆくのを見ながらはしゃいでいる。そんなこんなで目的の駅、トラウンシュタインTraunsteinへ着き、そこへ友人が車で迎えにきてくれ、まずは妻の職人学校時代の同級生が約一年前からやっているというケーキ屋へ移動。
そのケーキ店は、ちょっと街から外れた、こんなところに?と呆気にとられるような、そんな場所に忽然と現れる。クラスの中でも一二を争う成績を取って卒業した友人が開いているお店ということで、とてもわくわくしていた。ところで、どうしてこのケーキ屋に行くことになったかというエピソードがちょっと面白い。
同僚夫妻も我が家と同じ年頃の子供たちが二人いる。奥さんのベロが、小さい方を昼寝させるためにバギーに座らせ、散歩をしていた時のこと。まったく予想外の場所に、おいしそーなケーキの並ぶお店を発見したそうだ。後日、一家でそのお店にケーキを食べに行き、ふと、壁に飾られているマイスター証明書が目に入った。そこに記載されている年号が私の妻がマイスター学校に通っていた時期とかぶっているんじゃないか、と思ったそうな。そこで、おしゃべり好きな友人は、実はかつての同僚であった日本人にはこれまた日本人で菓子マイスターの妻がおり、かくかくしかじか、という話をし、妻の名前をだしたところ、あーーー、知ってるも何も、私たちはクラスのなかでもトップの席を巡って常に競い合った仲なのよ!というお返事が。その言い方が独特の南ドイツ方言だったらしく、友人は何回もこのフレーズを繰り返してウケていた。
そんなわけで、妻は以前、このお店にも行ったことがあるみたいなのだけど、今回、僕たち二家族総出での訪問と相成った。
ところで、このお店のある集落、典型的な農場の集落で、至る所に牧畜がわんさか暮らしている。次男を眠らせて、ゆっくりケーキと会話を楽しもうと目論み、昼寝の時間が迫る次男をバギーに座らせて集落を散歩したけれど、次から次に登場する牧畜に興奮してしまって、すっかり眠る気配を見せない次男君。挙げ句の果てに、バギーから降りてしまい、乗馬のために道路に出て来た馬が近づいて来ると、食べられる!!と悲鳴を挙げてパパとママの後ろにスルリと隠れる。翌日訪問した湖畔でも、白鳥が近づいて来た時には、こそこそとパパの背後に隠れて、そこから石をぶつけようとしていたしな。。
集落の美しい木組みファサード
さて、仕方がないのでなるべく退屈な村外れの小道を散歩し、次男がようやく眠りに着いてからカフェで至福のひと時を楽しんだ。自分はピスタチオ系のケーキを食したが、さすがに、うまい。ミュンヘンでも、これだけおいしいケーキを食べるのは難しい。妻は調理室などを案内してもらい、久しぶりの再会に話が弾んでいるようだった。
ここから、今回お泊りさせてもらう友人の実家までは歩いて約15分ほど。途中、集落の中の大きな牧畜場で牛にえさを与えているおじさんがいたので、その様子を観察していたところ、おじさんがニコニコしながら近づいて来て、妻に向かって、君がウチの娘の同期の人かい、と話しかけてきた。そこで初めて、彼が彼女の父であることがわかり、みんなでびっくり。
集落を抜け、なだらかな丘を超え、しばらく歩くと、そこに友人の家があった。建物は、自分もこの地域の住居を多く見た訳ではないけれど、かなり典型的と思える造りで、まず、玄関ホールが庭の方まで伸び、そこから階段を上がると二階部分のホールを中心としてキッチン、居間がある。そして3階部分が寝室もしくは子供部屋。
友人夫妻が夕食を準備してくれている間に、妻、長男と友人夫妻の長女は折り紙をひたすらつくっていた。長男は折り紙が得意で、呆気にとられるような力作を、あれよあれよと作り上げて行く。それにしても、折り紙の説明書というのは、どうしてあんなにわかりづらいものなんだろうと、常に思う。
自分は次男君と、友人の長男と三人でレゴを組立て、夕食はシュバイネブラーテンに舌鼓をうち、色々な話に花を咲かせている間に、あっという間に子供たちの就寝時間がやってきた。子供を寝かしつけ、また話をしようと言っていたのだけど、すっかり寝てしまい、気がついたときには既に翌日の朝。
朝食を済ませ、キームゼーの湖畔にある、木立の間に架けられたロープを渡って楽しむ施設(日本語でなんというのでしょうね??)に行って来た。
http://www.parkeroutdoor.com/outdoor-aktionen/hochseilgarten
偶然にも友人長女と長男は共通の趣味が多く、そのうちの一つがボルダリング。綱渡りも壁登りも変わらんだろうということで、子供たちがやったあとは、俺たちも登るぞ、と何故か友人は目をキラリとさせてニヤっと笑う。その時にはわからなかったが、実際に登ってみて、その含み笑いの意味が初めてわかった。それはさておき。
子供たちは地上1、5メーター位のところに架け渡された綱を渡る、子供たち限定の場所があり、ここを二周ほど楽しんだ息子は年齢制限のある高い方に挑戦したいと言い出した。友人夫婦の長女は、黙々と、まるで何かに挑むように休むことなく何周も行ったり来たりしている。
いよいよ自分たちも登ろう、ということになり、装備を装着して簡単なガイダンスを受けて、丸太一本が斜めに架けられた階段状のものを登った。想像していたことだけど、下から見るのと、上から見る景色は全く異なり、既にこの最初のステップで、自分の肝はすっかり縮んでしまった。命綱があるとはいえ、足を踏み外してガクンとぶら下がるのだけは勘弁したい、と思った。そして、もちろんそれを楽しむのだけど、渡されたロープの上はとても不安定でユッサユッサユアユアーンと揺れている。意外と面白かったのは、ローラを使って、斜めに渡されたロープを滑走することだった。なんていったって楽チンで気分爽快。一気に滑るので安定しているし。
そんなこんなで、一回地面に降りた後も自分の好きなだけ何回も挑戦できるということだったが、地面に降り立った後、友人と生還できたことを喜び合い、今回は一回限りでやめておいた。
楽しい時というのは時間の過ぎるのも早く、もはや夕刻が迫っていた。友人に駅まで送ってもらい、電車でミュンヘンへと向かう。素晴らしい週末の余韻に満たされた家路は、日常へと回帰する、のんびりとした沐浴のようだ。
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