2015年11月16日月曜日

Salzburg

秋休み、田舎に引っ越した且つての隣人夫婦の家に遊びに行って来た。ついでといってはなんだが、Traunstein近くにあるその場所Eisenarztから電車で30分、オーストリアの国境を超えてSalzburgまで足を伸ばしてきた。いわずもがな、ここはモーツアルトが生まれ、そして活躍した街でもある。AugsburgではLeopold Mozartの家を訪問することができなかったこともあり、おもちゃを買ってあげることを条件に息子とモーツアルト見学と洒落込んだ。
ところで、モーツアルトの生家と住居の見学はそれぞれ10ユーロ。とんでもなく高い。一方、ザルツブルグの様々な施設を見学することができる一日パスはオトナ27ユーロ、子供10ユーロ。結局、この一日券を購入して行動した。

まず、街中のモーツアルト生家。とても10ユーロも金をとるとは信じられない展示のしょぼさだが、これもモーツアルトの生まれと生活の息吹を感じるために支払うものと考えれば安いのかもしれない。建物は旧市街の目抜き通りに建つ。一階にはスーパーマーケットのSPARが入っていて、そこでモーツアルトチョコレートを買った。中心は緑だから、抹茶でも入っているのかと思ったが、もちろんそんなわけはなく、ピスタチオクリームが入っている。息子のペースに合わせたので詳しく見学していないが、一家族の家としてはかなり広い。しかし都市住居なので光井戸程度のコートヤードがあるのみで中庭などなく、この周辺も建物で埋め尽くされているので、子供時代のモーツアルトは公園とかできゃっきゃいって遊ぶ事もなく、音楽漬けの生活をおくっていたのだろうなぁ、などと思う。
モーツアルト生家
一日券が有効なので、せっかくだからと崖の上に建つ城へ、山岳列車に乗って頂上までいく。乗車料は11ユーロ!乗車時間はたかだか一分だよ!崖の上から、フィッシャーフォンエルラッハの教会を眼下に望み、そこに行こうよというと確実に息子がぶーたれるので、それも今回は断念。しかし、絶景ではある。城には、農民蜂起のCGを見る事ができる人形ミュージアムや、騎士の生活や戦闘の様子を伺い知る事のできる城博物館がある。

空が光り輝いている。城の下から西側の空を見上げる。
ザルツブルクは町並みと主要道路を繋ぐパッサージュが面白いので、実はそちらのほうも散策したかったが、こちらも息子が退屈するのは確実なので、さっさとモーツアルトの住居へ向かう。
メインストリートの突き当たりには、教会の塔が。

川沿いに、モーツアルトチョコの専門店を発見。真っ赤。

モーツアルトの住居は、川を挟んで旧市街の反対側、メインステーション側にある。こちらも入場料10ユーロ、展示内容もしょぼい。しかし生家と同様の理由で、高いけれど安いのかもしれない。なんかよくわからなくなってきたな。ワイマールのゲーテハウスは感動したんだけどなぁ。おまけに館員のガラの悪さに辟易。モーツアルト、ごめんよ、あんまり感動しなかったよ。息子君は、なんとなーくモーツアルトの凄さは理解したみたいだったけどね。

その後、かつての隣人の家に泊りに行ったんだけど、そこは二世帯住居になっていて、下階に住む家族の18歳のベニー君に、モーツアルト巡りしてきたよ、というと、ああ、超退屈なザルツブルグのモーツアルト巡りね!と軽いジャブを返され、ああ、そういうのは子供には退屈なんだなぁ、と改めて気づかされた。

修学旅行で、寺とかに感心していた自分は、ちょっとオカシカッタンかな?

そういえば、ザルツブルクからトラウンシュタインへ戻る電車、乗車しようとしたら、乗車口が一つに限られていて、パスポートの提示を求められた。移民問題で揺れるドイツの現状を再認識。妻が出かける前に一言、パスポート持っていった方がいいよ、といってくれなかったら、電車に乗ることができなかったかもしれない。

翌日は、田舎道を散歩。馬とかやぎとかシカって、タンポポの草をよく食べる。次男君はもちろんビビって手持ちで餌付けすることはできなかったけど、自分も実は馬に手持ちで餌付けするときにかなりビビっていたのであった。

やっぱり、ポーズはしっかり決めないとね。

2015年11月12日木曜日

名医とは、こういう人のことをいうのだろう

ミュンヘンはいい天気。

ところで、ここ数年喉の痛みがあり、且つ、そのおかげで、歯磨きの時など嘔吐しそうになる。幾つかの耳鼻咽喉科を訪れたが、なんだかぱっとした診察をしてくださる医師に出会うことが出来ずにいた。結局何が原因なのか、明確な説明を誰もしてくれない。まったく問題ありませんね、とも言ってくれない。おかげで、もしかしたらやっかいな病気なのではないかと少々不安になってもいた。

先日、事務所の近くということで、耳鼻咽喉科のDr. Jolkの門を叩いた。白髪の、ちょっとやせ気味の医師。診療所には多くの絵が飾られ、美術愛好家であることが伺える。
まず、最初の診療にて、先生は、自分がアレルギー体質であることから鼻が詰まり、それで口呼吸するので、乾燥した空気により喉が腫れるのではないか、という仮説を立てた。そのことを、理路整然と、ゆっくりと、外人である自分にも100パーセント理解できる口調で説明してくれた。とりあえず、その日は、喉の奥に例の茶色いドロドロした、妙な味の液体薬をつけてくれた。
「自分はみそ汁は飲んだ事はないけれど、きっとこの薬はみそ汁の味のように苦いだろうね。」
そういって、一人で押しつぶすような笑い声をたてた。

二回目の診療では、腕に17種類のアレルゲンを付けて、どの物質に対してアレルギーを持っているかのテスト。そして数種類のものにアレルギー反応があった。その際には血液を採取し、そのアレルギーがどの程度の強さを持ているのかを調べてもらった。

その結果が出た三回目の診察。何に対してどの程度のアレルギー体質なのかが明らかになった。処方してもらった薬によって、喉の痛みもすっかり消えていた。その結果、鼻がつまり、喉が腫れていたのだということが、やっと明らかになった。
「さて、そうしたら、どのように直せばいいのか。」と先生は一呼吸ついて言う。
Hyposensibilisierungという治療法をお薦めするよ。
「先生、そのHypoなんちゃらというのは何ですか?」
先生の説明によると、HyperとHypoというのは対語であり、Hyperというのは過剰でるものをさし、Hypoとは抑制するものを指すのだそうだ。つまり、Hyposensibilisierungというのは、アレルゲンを定期的に皮膚の下に注入し、そのことによって、アレルギー反応を抑制するものであるのだそうだ。
「これが、驚くべき事に効くんだよ」
そういて、また押し殺したように笑うDr. Jolk。
「この場で決断しなくてもいいから、この治療をするかどうかしばらく考えてみてください、また何か問題があったら、私のところに来なさい、私はこの診療所にいつもいるのだから」

何とも力強い言葉である。迷いのない、明晰な診断、そして患者を支え、不安を払拭し、安心感を与える言葉の数々。名医というのは、こういう人のことをいうのだろう。


2015年11月9日月曜日

改修プロジェクト Peter Haimerl in Munich

先日、日本人建築士であるTI君の勤務するペーター ハイマール設計事務所の改修物件を、ミュンヘンのAlt Riemに見学に行って来た。彼の旧同僚とその彼、もう一人、若手日本人建築士のI君も参加。I君はリトアニアの物件を担当しているんだって。で、リトアニアってどこにあるの?って聞いたら、ロシアの隣という返答。でもロシアは広いからねぇ、それだけじゃ、どこかはわからないっすよ。

今回の物件、施主はEurobodenというミュンヘンを代表する民間デベロパー。そして、ペーター•ハイマールという建築家、かなりの曲者で、ドイツでは唯一といっていいぐらい日本的な建築の作り方をする。かなり造形と空間重視で、はっきり言わせてもらうとディテールがない。しかし、そのディテールのなさまでも彼の持ち味にしてしまうとう恐ろしい手腕の持ち主でもある。

TI君の話によると、やっぱりペーターはぶっ飛んだ人で、建築のことしか考えられない人らしく、それでも人を巻き込んで行くパワーはすごいということだった。

で、今回、TI君のお誘いを受けて見学させてもらったこの建物、それこそ目から鱗がでるような、自分の経験からいって、それが成り立ってしまうのが信じられないような、それでいて空間の質はハンパなく面白いものだった。

Vor paar Wochen habe ich das Sanierungsprojekt vom Münchner Architekt, Peter Haimerl besichtigt. Die Besichtigung hat der japanische Architekt TI, der bei Haimerl arbeitet, organisiert.
Der Bauherr ist Euroboden, einer der wichtigsten privaten Bauträger in München.
Der Architekt, Peter Haimerl ist auch einer der interessantesten Architekten aus Deuschland, der ist fast einziger Architekt, der japanischerweise im Sinne der Räumlichkeit und des Konteptes entwirft.

Nach TI, hat Herr Haimerl nur Architektur im Kopf und seien Anziehungs- und Überzeugungskraft diesbezüglich enorm.

Und das Gebäude im Alt Riem ist nach meiner Erfahrung unglaublich zu bestehen, aber zugleich ist seine räumliche Qualität sehr attraktiv.

建物前庭になる屋外スペース
der Vorgarten auf der Seite der Straße

建物の外観は、改修物件ということもあり、いたってノーマル。前面の広場には、塗装の施されていない木材の四角い大きなボックスのようなものがあるが、道路側にゴミ収集バケツ、そして家側は屋外テーブルが収納されている。
建物は一見、一軒家のように見えるが、ドイツではよくあるドッペウハウスヘルフテというやつで、二つの建物の一方の壁をくっつけることによって一つのボリュームに収まっている。既存建物はハーフティンバーだと思う。で一方の住居と他方の改修手法が全くといっていいほど異なる。まず、案内してもらった順番に説明していこう。

Die Aussicht ist ganz normal, da das Projekt Sanierung ist. Im Vorgarten befindet sich ein Box mit der hölzernen Bekleidung, in das die Mülltonnen und der äußere Tisch unterbracht sind.
Das Haus scheint ein Einzelhaus zu sein aber es ist Doppelhaushälfte, die in Deutschland gängig ist. Das Bestandsgebäude soll Halftimber sein. Die Wohnungen sind gegeneinander mit der komplett anderen Methoden saniert. Ich erkläre, wie wir besichtigt haben.

建物外観、いたってノーマル、しかし内部はとんでもないことになっている
die scheinnormale Fassade. Die Innenseite ist Überraschung!

道路側から見て右側、大きな木の扉が右側住居の入り口となる。こちらがわの住居は内部がコンクリート造になっており、おそらく木構造をとっぱらって、コンクリートが外構(屋根、壁など)を支える構造になっている。木の扉を開くと、こちらが本物であるガラスの扉が現れる。左手にコート掛け、一段下がると寝室、右手を登るとダイニング、さらにその上段にキッチン。この住居は主空間が階段空間とでもいうべきもので、階段の折り返し部分でもある踊り場空間にうまいこと生活機能を落とし込んでいる。階段が、バベルの塔、もしくは屋上庭園でよく見るように、上部にいくにしたがってセットバックしているので、上部は吹き抜け空間となり、幾つもの生活空間が繋ぎ合わされていると同時にダイナミックな空間となっている。

Der Eingang der rechten Wohnung von der Straße betrachtet, ist vom Holztür bedeckt. Die Struktur der Wohnung ist vermutlich Beton, die von der Innenseite die Außenhülle stützt, danach die Bestandsstruktur abgerissen worden sei. Hinter der Holztür steht Glasfassade mit der Glastür. Der Eingangsbereich ist sehr eng, links Garderobe, rechts die Treppe nach oben.
Das Raumkonzept der Wohnung ist der Treppenraum, auf den Absätzen sind verschiedene Raumfunktionen geplant. Die Treppe staffelt rückwärts, dadurch entsteht ein Luftraum, der die verschiedene Räume dynamisch verbindet.
ダニエルが立っているところがキッチン
Die Küche. Von Recht fällt das Licht schräg.

下がキッチン、その上に居間空間。写真を整理していても、どっちが上か判断に迷う
Die Farbe ist monotones

この発想は、通常の設計活動でおもいつくことはないなぁ。。。かりに思いついても、これを実際に形として実現してしまうところがすごいわ。。こんな小さい住宅で。
最上部の、廊下を広げたような居室空間を通って、寝室に至る。子供部屋、めちゃ暗い。ちっちゃい窓、ひとつだけ。最上部にある倉庫につかわれるような部屋にいたっては、不思議の国のアリスになったような気分にさせるスケール感のなさ、それでいて、かわいらしいぃー部屋。打って変わって、まるでゴジャースな夫婦の寝室。床は、事務所に使われる合成樹脂塗装床。しかし、なんのために!?この発想もあんまないわ。でも違和感もないわ。この住宅を全体的に占める階段的モチーフで造形されている洗面台もいい感じ。でも、寝室からのしきりなし。うってかわってシャワー室はコア部分に、すごーい狭くてすごーい天井高のある空間になっている。

Ich war bewundert, dass diese Idee in solcher kleiner Wohnung realisiert wurde. Sie würde mir höchstwahrscheinlich nicht einfallen, wenn sie aber einfallen würde, würde ich nicht versuchen, sie weiter zu entwickeln.
Übrigens erreicht man das Schlafzimmer und das Kinderzimmer durch den Wohnbereich, der ein Teil des verbreiteten Flurbereiches. Das Kinderzimmer ist außergewöhnlich dunkel mit einem kleinem Fenster, der weiße Papiervorhang an der Wand hängt, dadurch das Zimmer ein Tick heller wird. Der vermutliche Lagerraum ganz oben ist das Zimmer von "Daniel im Wunderland", wie ich Foto zeige...
Im Kontrast dazu ist das Schlafzimmer der Eltern sehr angenehm und hat angemessene Größe. Bodenbelag ist überraschungsweise Kautschuk, der normalerweise beim Industriebau ausgeführt wird. Diese Idee würde mir auch nicht einfallen.. Aber sieht es überhaupt nicht komisch aus. Der Waschtish wurde auf die Motive der schrägen Fläche entworfen und sehr geil! Aber kein Trennelement. Im Gegenzug ist der Sanitärraum sehr hoch und prächtig, da der sich in der Mitte des Gebäudes befindet.

居間。狭い。空間はかっこいい
Wohnbereich, sehr eng aber gut.

これが噂のダニエル•イン•ワンダーランド
Daniel im Wunderland
一方の左側の住居。こちらは、既存部分が多く残る改修となっている。基本的に、水回り部分を中心に改修をされている印象を受けた。既存の残し方が、またダイナミック。寝室の床の隙間から、下の客室が透けて見える。光と音がだだ漏れなので、かなり使いづらいのではないか。

Andererseits, die linke Wohnung von der Straße. Bei ihr bleiben so viele alte Bestandteile und liegt Schwerpunkt der Sanierung auf den Sanitär- und Küchenbereichen, nämlich den Nassbereichen. Die alten Wohnungsteile sind echt unglaublich erhalten. Z.B. der Boden des oben liegenden Schlafzimmers. Auf dem wurde kein neuer Bodenaufbau konzipiert, dadurch der erhaltene hölzerne Bodenbelag ist direkt auf der Bodenstruktur und durch die Schlitze zwischen den Bodenbelägen ist der darunter befindliche Raum sichtbar... Lärm und Licht sind nicht blockiert... So ein Wahnsinn!

既存の木造壁がシャワー室の壁。防水もへったくれもない
Die alte Holzwand bleibt gegenüber der Duschbrause. Abdichtung ist gar nicht berücksichtigt...

既存の木造壁と漆喰の改築部分のコントラストを狙っている
Kontrast zwischen dem neu ausgeführten Putz und der erhaltenen Holzwand ist sehr stark und wurde absichtlich inszeniert 
キッチンは、既存のレンガ壁に向かってキッチン台があり、天井も高く、壁に穿たれた既存窓が強調されて、とてもいい感じ。ただし油汚れでなどで、使っているうちに汚くなりそう。食堂は庭に向かって開かれ、相当にいい空間になっている。この住居において、唯一まともな空間に思えた。
In der Küche, ist die Küchentheke vor dem alten Mauerwerk geplant. Der Raum ist sehr hoch und die Fenster, die sich in der Höhe befinden, sind betont und eindrucksvoll. Aber die alte Wand würde höchstwahrscheinlich m Laufe des Jahres durch Dampf und Spritze des Öls schmutzig. Der Essbereich öffnet sich zum Vorgarten und sieht sehr angenehm und zu mir erscheint der beste und vernünftige Raum von den Wohnungen.

キッチンの壁。
この建物は写真でみるよりも、実物のほうが10倍くらい、いい。
自分の写真技術が下手なのか。。
Die Küchenfenster. Auf jeden Fall ist das echtes Gebäude zehnmal besser als Fotos. Oder meine Fototechnik  nicht so gut?
総合的に、建築家が、部分部分でいい空間をつくりたいというクリエイティブな意気込みの垣間見える面白い建築であったが、ある意味、暴れ馬的な住居であり、これを乗りこなす住民の創意と工夫が要求されているともいえよう。
Total betrachtet, ist das Gebäude wegen der mutigen Kreativität vom Architekt sehr interessant, aber zu wohnen ist Mut und auch Kreativität des Bewohners nötig.

いずれにしろ、ハイマール事務所のTI君の成長に感心(?)するとともに、今回の見学をコーディネイトしてくれたことに感謝。
Und ich bedanke mich für die Koordination bei TI-kun.