家族が日本に帰省してしまい、暇をもてあましている。仕方ないので今日は何か新しい活動を、などとスローガンを立ててみたものの、なんら思いつかない。そこでマリア・ヒメルファールトという祭日だった金曜日はドイツ博物館に行った。午後をまるごと使って、船についての展示を詳しく見た。それはそれで面白かった。
地中海の造船技術と、北海などで活躍したバイキングの造船技術というのは、全く違うらしいね。ついでに造船の言葉が、建築用語に転化している例が散見されて面白かった。そして、それらの海上交通と、それを結ぶ陸路として発達したドイツ内陸部の都市などに思いを馳せ、一日が終わる。
今日は、前述の通り、素晴らしい一日だった。これは小都市訪問日和、と意気込んでは見たものの、いかんせん、日曜日である。ドイツでは、日曜日に小都市訪問しても、悉く店が閉まっているので面白くも何ともない。知人から聞いたバッサーブルグを訪問するのは、また天気のよい土曜日にすることにする。
しかし、一日中家にこもってしまうのはとてももったいない。だから、ニュンフェンブルク公園の中にある小館群を訪問することにした。チケットは4,5ユーロ、ミュージアムショップで購入することもできるが、それぞれの建物でも購入することができる。建物は散在しているので、全ての見学には3時間程度かかる。
ニュンフェンブルク城のある公園は、最初、フランス風幾何学庭園として計画された。17世紀末のことである。それが、風景式庭園に改造されたのは、19世紀初頭。英国式庭園(イングリッシャーガルテン)や、都市壁撤去後の旧市街の造形にも大変貢献した、シュケルという造園計画家による。
ところで、今回自分が訪問した小館群は、すでに18世紀初頭には建造されていた。以下にリストアップする。
アマリエンブルグ
バーデンブルグ
パゴーデンブルグ
マグダレーネンクラウゼ
このうち、バーデンブルグはフランソワ・キュビリエ、そしてそれ以外はヨーゼフ・エフナーの計画による。
さて、史実を書き連ねても面白くもなんともないだろう。自分の所見のみ書き連ねていこうか、と思う。
トータルの感想としては、ガイドブックの写真が綺麗すぎるのか、実際に見ると、落胆する場合が非常に多かった。そんな中にも、ハイライトは幾つかある。
一つ目はアマリエンブルグの鏡の間。小館の中に突如現れるロココの結晶には驚かされる。とはいえ、南ドイツのロココ建築を見慣れた目には新しさを発見することはできない。
アマリエンブルグ 鏡の間
二つ目、パゴーデンブルグの日本の間。これは、建物二階部分の、湖に面した部屋がそれだ。ヨーロッパの部屋の設えとして、木製の板が壁の腰部や、ドアの枠部分に貼られる場合が多い。この部屋では、その木板部が漆のような黒で、基本的に開口部周辺に取り付けられており、壁面の白色とコントラストをなし、心地よい部屋の分節とリズムを生み出している。シノワズリーとは明らかに違うジャポニズムであり、中国趣味の室内装飾が明らかに西洋風であるのに対し、日本趣味のそれは、明かに日本テイストが西洋テイストを凌駕してしまっていて、そのアクの強さに驚く。それが18世紀初頭という早い時期に採用されている、ということも驚きであったが、あのような広大なニュンフェンブルク公園の中にポツンと異質な空間が存在していることを思うと、凝固したオニキスが鈍い光を放っているような眩暈にも似た感覚に襲われる。
パゴーデンブルク 外観
日本の間
日本の間
三つ目は、マグダレーネンクラウゼの鍾乳洞風の、貝殻で覆われた礼拝堂だ。時、すでにイタリアではバロックの最盛期を過ぎた時に、ミュンヘンでは、ゆがみが再度矯正された、というか本物の貝殻が貼り付けられた、騒々しい装飾が採用されたというのも面白い現象だと思う。
マグダレーネンクラウゼ 礼拝堂
バーデンブルグはそんなに面白くなかった。そもそもキュビリエの建物ってそんなに好きじゃないし。
明日は映画の日なので、猿の惑星を見に行ってきます。
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