2012年5月29日火曜日

ドイツ建築旅行 ベルリン

紀行を書いていると、一番最後に一番感動したことを書こう、とためておりて、結局息切れして書かずに終わってしまう。ウィーンでのワーグナー、ポストシュパーカッセについてはまだ書かずにいる。

そんなわけで、昨日、今日とミュンヘンの、今まで見てこなかった建築を訪問してきた感想を書く欲望がむくむくと頭をもたげてくるわけだが、ここはそれを我慢して先日のドイツ建築旅行をベルリンの章にてしめくくりたいと思う。

フンボルト大学 図書館 マックス・デュデュラー
ドイツ建築旅行の最終日の前日、午後7時ごろにベルリンに到着した。とりあえずホステルにチェックインし、マックス・デュデュラーのフンボルト大学図書館を見に行く。時間が時間なので、その日に見れるのはこの建物だけ。しかし、大いに期待するものがあった。
しかし、ベルリンっ子はこの建物、全然しらねぇのな。場所を二人ぐらいに聞いて、とってもトンチンカンな方向を言われた。警察官に聞いても同じようにトンチンカンな方向を指す。僕はその時、フリーデンシュトラーセという、この図書館が徒歩5分圏にあるはずの場所にいたのだが、みんなここから15分くらいかかるという。そこで、みんなの意見を無視して自分の直感に頼る。そして、発見できた。

ところが。ロッカーの鍵は南京錠で、それを持参しなければいけないのだった。自分は大きい荷物を持っている。そこでホステルへ一度帰り、荷物を置いて再び図書館を訪れた。

建物の内部は撮影禁止だったので、写真は残念ながら貼ることが出来ないので、建築家のHPのリンクを貼っておく。

Max Dudler
http://www.maxdudler.com/

そして建物の写真
http://www.maxdudler.com/43-0-Jacob-und-Wilhelm-Grimm-Zentrum+Berlin.html?animateProject=1

建物の写真のリンクで、ページの右側にカーソルを置くとスクロールできるようになっているので、内部空間の写真をみていただきたい。

ウンガース事務所出身者の常で、グリッドの繰り返し。しかし、この内部空間の異様な象徴性はどうしたものか。テーブルについてしばし、向こう側で勉強に励む人々を観察しながら、威容を誇るホールをボーゼンと眺め続ける。

翌日、ミースの新ナショナルギャラリーを見にいくためにポツダム広場にて下車。そこでばったり蚤の市に遭遇。そこで、一目惚れした洋裁道具入れを35ユーロにて購入。飛行機に乗って、その日にミュンヘンへ飛ばなければいけないことや、その後幾つもの美術館を訪問しなければいけない、と一瞬頭によぎったが、このチャンスを逃す手はない。
この洋裁道具箱は足とトッテがついて高さ約60センチ、幅、40センチという代物。使い込まれた木の風合いが良く、両側に蛇腹のようにパカッと開く。中には針やら糸やらがゴッソリと詰まっている。息子の工作道具収納箱にはもってこいだ。
そこでエッコラオッチラ、取手を握り締めながら広場からナショナルギャラリーへの道を歩いた。

新ナショナルギャラリー
正直に申しまして、この外観、最初に訪問したときには何がいいのかまったくわからず、入場料の高さも手伝って入るのをやめてしまった。今回は、入場する覚悟で訪問したわけだ。階段を下りるとレセプションルーム兼休憩室の大きめのホールがある。非常にすっきりしたデザインだ。ちなみに地上階は何も展示されておらず、見学することができなかった。もう一度、繰り返す。非常にすっきりしたデザインで、抽象化されたデザインだ。床と天井の間に仕切りがはめ込まれている。庭に面している部屋はジャッドなどの抽象彫刻が展示され、現在はそうではないがかつては床に敷き詰められた床材が、庭に敷き詰められた石の床材と同じ大きさで、内と外の境界の分断を緩くする意図があったらしい。


庭は美しい。バルセロナパビリオンを彷彿とさせる。バルセロナ、行きたいなぁ。


今回は、シャローンの国会図書館も見たい、と思ったんだけど、生憎、祝日ということで閉館。前回来た時も改修中で休館。本当に相性が悪い。この図書館、ヴェンダースのベルリン天使の詩に登場することでも有名です。

仕方ないので、ミュージアムインゼル、美術館の島へ。
まずここで最初に見たのは、アルテス・ムゼウム。古典様式建築、シンケルの代表作。
アルテス・ムゼウム
ここから、古代の遺産を巡る長い美術館訪問が始まるとは想像していなかった。
まず、この美術館には、ギリシャ時代からローマ時代へかけての神殿や墓所の彫刻群が展示されている。
しかし、そんなことよりも、シンケルの建築である。ミュンヘンっ子にはクレンツェやゲルトナーの好敵手という感覚も強いだろうが、世界的知名度からいうと、まったく話にならないくらいシンケルのほうが有名だ。たしか、シンケル、クレンツェともにベルリンでギリーの教えを受けていたと記憶しているのだが。
あの有名な階段室、そしてドーム。詳細はわからないが、これは大戦で破壊されたのだろうか。なにやらチープさが目だってそれほどの感動を呼び起こさない。ドーム空間も、僕はどちらかというとこんなに象徴的なものよりも、ゲーテハウス的な、アシンメトリーさ、日本空間的(ゲーテについて言及し、日本空間的なテーストについて述べるのも、はっきり言っておかしな話だが)なものに魅力を感じる。ところで、気になったことがあって、ミュンヘンのピナコテークデアモデルネの天窓は、この美術館の天窓を模倣したものなのだろうか。


ノイエス・ムゼウム
いまいち、ベルリンの美術館のネーミングとその展示内容が記憶できないのは自分だけだろうか。今調べた結果によると、こういうことになっているようだ。ミュージアムという名前のついているものは博物館的なもので、ナショナルギャラリーが絵画的展示内容。
調べたおかげで、なぜに展示内容のかぶっているアルテス・ムゼウムとノイエス・ムゼウムがあるのか、といった謎も解けた。



Altes Museum 古い博物館。シンケル設計
Alte Nationalgalerie 古い美術館。今回は訪問しなかった
Neues Museum 新しい博物館。チッパーフィールドによる改修
Neue Nationalgalerie 新しい美術館。

おまけに、ミュンヘンの美術館がピナコテークと称しているのは、ベルリンを意識してからのことなのだろうか。
ところで、このノイエス・ムゼウム、あまりにチッパーフィールドの仕事が多角的すぎて、結局彼が何をしたかったのか、いまいち良くわからなかった。改修という案件からいくと、まぁ仕方のないことなのだろうが、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークを戦後の混乱期に復旧させたデルガストの手法と比較すると、チッパーフィールドの混乱振りもよくわかるというものだ。
この建物のメインはなんといっても中央階段室。


材質は人工石。表面の違いで様々な表情を出している。この質感は好き。最近は、レンガの上にレンガの目地漆がわかるように塗ってある壁の表情が好きだ。



この後、飛行機の関係もあり、30分ほどの駆け足でペルガモン博物館を見に行った。正直、30分で見れる物量と情報量であるはずがない。しかし、あの神々と巨人族の戦いのレリーフを見れたのは良かった。
しかし、ペルガモンとミレーを訪問して、すっからかんだなぁ、と感じたのもそのはず、これだけのものがドイツへはこばれてしまっているのだからしょうがない。しかし、現地にそのまま存在し続けるよりも、ドイツへはこばれるたことによって今の保存状況を保っていることができる、といった話はどこかで聞いたことがある。
太古に想いを馳せると、人間の歩んできた、蓄積してきた莫大な遺産と情報量、努力に敬意を表さざるを得ない。今回の旅は、近代というほんの束の間に起きたこの凄まじい速度の変化の時代が、人類歴史の中で、どのようなものであるのか、といったことの片鱗を垣間見ることが出来た、という意味において、本当に充実したものだった。
あ、ところで、今日、博士論文、ミュンヘン工科大学に無事に提出することができました。いやっほう!

Heute konnte ich problemlos meine Doktorarbeit zur TU München abgeben. Ich freue mich darüber sehr!

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