緑地と地下鉄駅などのインフラが近接していることが、質をともなう高密度化を可能にする前提となる。
1.地域タイプ1 独立住戸タイプ
分析
ミュンヘンでは、一世帯あるいは二世帯独立住戸タイプは、住居地域の56%を占めるが、それらの総床面積に占める割合は25%に過ぎない。
図1 現状図
戦略
既存の、そして将来的に建設される住宅は、街路に面して設定される建設可能な建物ボリューム内に納まっていなければいけない。これらは4~5メートル幅の前庭を伴わなければならない。この規則は、街路に面する建築ラインを揃えることと、前庭空間を確保することが目的である。一方、敷地の内側では、建築線(ここでいう建築線とは、建物をこの線に合わせて建てなければいけない線をいう。)から14メーター、セットバックした地点に敷地境界線が設定される。そうすることによって、採光、通風のための中庭空間が確保される。
この規則をスタンダードとして、幾つかのバリエーションが考えられる。
バリエーション1:上記の要件、かつバイエルン州法規の斜線制限を満たすことによって、一戸建てタイプでは、3階建てが可能となる。
図2 バリエーション1
バリエーション2:敷地を越境する二世帯、三世帯一住戸タイプ。(ここでいう二世帯、三世帯とは、血縁関係による世帯を意味するものではなく、全く血縁関係のない家族がすむ建物のことをいう。)この場合には4階建て建物が可能になり、容積率が嵩上げされる。
図3 バリエーション2
バリエーション3:もっとも高密度な、閉鎖住棟方建築タイプ。三階建て建物に、軒先から3メートル後退した部分から立ち上がる4階部分が許可される。
図4 バリエーション3
効果
いづれのヴァリエーションにおいても、高密度化は達成される。これらの実現には、敷地所有者の計画への同意が必要不可欠であり、加えて、教育、福祉施設や、スーパーマーケットなど、生活必需品を調達するための施設への至近性が十分であるか、十分でない場合には、補完されなければいけない。
この成長は短期スパンで成し遂げられるものではなく、二世代、三世代に渡って行われるため、順次、建物の解体と成長に見合った公共施設の新築を行うことは可能であろう。
交通計画としては、駐車場のマネージメント、地域住民用駐車場や、まったく新しいコンセプトである地域ぐるみのカー・シェアリングや、スカイプなどによるE-モビリティーによって地域のエコロジカル・フットプリントは減少するだろう。
____________________________________________________________
このテスト地域は、私の住む地域の近郊であるため、馴染みのある地域である。確かに随分ゆったりとした敷地割りと住宅密度で成り立っている地域である。こういった場所が高密度化してゆくことは、個人的には賛成といえる。
ここで以前見学しにいった、ミュンヘンのイングリッシャーガルテン横の、パウル・シュミットヘナーの個人住宅周辺の地域を思い出した。当然、シュミットヘナー住宅周辺のほうが富裕層の住む地域であり、住宅単体も趣向の凝らされたものが多く、街歩きしていてもそれなりに面白さを覚えた記憶がある。ということは、密度を上げなくとも、街としての面白さは演出可能なのだろう。
これは、パウル・シュミットヘナーの嘗ての住居。現在は孫が住んでいると聞いたことがある。
これは、オットー・シュタイデルの初期住宅。緑と工業製品のコンビネーションがいい。 強いて言うなら、ミュンヘン版山本理顕といったところか。彼はその後都市住宅を多数残すが、これからというときに突然亡くなってしまった。残念。
また、以前訪れたことのある、イギリスのレッチワース、田園都市的雰囲気も、同様のものであった。もちろん田園都市のほうがもっと低密度であるのだが。
ただ、住居密度が上がることによって、こういった地域には今はない商業施設、例えばカフェなどの出店が期待され、そうなることによって、私のような都市生活者をひきつける魅力を帯びる可能性がある。
いずれにしろ、ここでのミュンヘン市の議論は、不足している住居の受け皿をどのように作り出すか、という点にあるので、私の感想は的を外したものであるかもしれない。
更に的を外すコメントをさせていただくと、なんといっても、実際にこういった計画を肌で感じると、私の生きている間に都市の変遷を目の当たりに出来るかも知れないという思いが沸き起こり、それはそれでエキサイティングである。
0 件のコメント:
コメントを投稿